高校の種類について

夏休みも半ばを過ぎ、いよいよ新学期ですね。

中学3年生にとっては、卒業後の進路に向けて

本格的に活動していく時期かと思います。

小学校から中学校へと進んだ後に選ぶ進路として、

最も多く選択されているのは「高校進学」。

平成28年度の高等学校等への進学率は98.7%という数字に達しており、

中学卒業=高校進学という考え方が、現代ではかなり浸透していると言えます。

そこで今回は、高校の種類について解説したいと思います。

通常、進学する高校を選ぶ際には、

学力、校風、卒業後の進路状況から選んだ本人の希望と、

家庭及び学校とで相談・面談を重ねながら判断することになります。

過去と比較すると、現在世の中の多様な価値観や生き方に応えるべく

々な形態の学校が存在しており、

子どもの状況に応じたカリキュラムが組まれるなどの

配慮もされてきています。

それぞれの学校の特徴を知った上で納得の進路が決められることが

一番良いことだと思います。

高校には、大きく分けて

全日制、定時制、通信制

の3種類があります。(以下に簡単に説明をします。)

●全日制高校
・一番馴染みのある高校と言える。3年制
・授業は1コマ50分、1日6~7時間の週5~6日
・朝登校、夕方下校
・勉強をメインに考えている生徒が多い

●定時制高校
・卒業までは基本4年間かかる
・授業は1コマ45分、1日4時間が主流
・夜間部が主流だったが、現在は午前部、午後部もある
・働きながら通う生徒が多い

●通信制高校
・基本は3年間で高校卒業資格を取得する
・授業は年に数回。基本は自宅でレポートに励む
・登校日数を選べる通信制高校が増えている
・勉強以外にもやりたいことがある、集団や通学に不安がある生徒が多い傾向にある

 

学校の種類による違いは、大まかに説明するとこうなります。
いざ高校を選ぶとなると、
「どの高校が自分に合っているのだろう」
「自分に行ける高校があるのだろうか」
といった不安を抱える人もいるかもしれません。


同様に、我が子の状況を見て、

どこが良いか、何をすれば良いか

悩む保護者の方も多いと思います。
学校の種類による特徴はあっても、学校によって雰囲気や特色は異なりますので
まずは情報を収集したり、自分の目で確かめたりしながら、
進学したい高校を選択することが良いでしょう。

高校生活は、中学生活に比べてとても速いスピードで「社会」が近づいてきます。
進みたい進路や将来像がはっきりと決まっている人もそうでない人も、
責任ある選択ができるように準備を整えていきたいですね。

次回以降、「高校」についてさらに深く掘り下げてみたいと思います。

 

 

イラスト:ニョラネコ

 

LDとは②

前回は、LD(学習障害、以下LD)の特徴について説明しました。

こうした特性を抱えていても、対応や学び方を工夫することで、

症状を少しずつ改善したり、学びやすくしたりすることは可能です。

今回は、LDの子どもへの配慮や対応の仕方について解説していきます。

 

・「読む・書く」の困難について

→文字の拡大やマス目のノートの使用など、

読み(書き)やすくする工夫をする

×「とにかく書いて(読んで)覚えましょう」

〇読み・・・単語と単語の間を空ける、行間を広くする、など

 書き・・・大きいマス目のあるノートを使う、ノートの代わりにタブレットを使う、など

…小さい文字や潰れた文字は大きく拡大することで、読みやすさが飛躍的にアップします。

 読む・書くこと自体も大切ですが、「知識を活用できるようになること」が一番大切です。

 

・「聞く・話す」の困難について

→会話は短く端的に。メモや機器を使って

聞き(話し)やすくする工夫をする

×ざわざわした環境での会話、長い説明など

〇静かな環境で話をする、メモやボイスレコーダーなど聞き(見)返せるようにする

…メモを取る習慣は、大人になっても有効ですね。話がまとまらないときは、聞き手側がある程度リードしつつ、話の順序立てをスモールステップで教えてあげると良いでしょう。

 

・「計算・推論」の困難について

→目で見て、イメージしやすくする

×「この問題はここがこうなるよね、じゃあ次は…」

〇問題にイラストなどを添える、解説動画を見せる、など

…図のように、ひっ算の補助線を引くことで、どの数字がどこに来るかが整理しやすくなります。

 

などなど。

現代では、スマートフォンやタブレットなどのICT機器の普及が進み、さまざまな場面で

学習の補助ツールとしてICT機器は活用されています。(後日解説)

カメラやタイピングなど、ICT機器は生活の場面だけでなく

LDの子どもたちにとっても非常に有効に

活用できる機能は数多く搭載されていますので、

必要に応じて学習活動に取り入れてみると良いでしょう。

その他、スウェーデンで開発された

ワーキングメモリ(短期記憶)トレーニングの研究では、

ワーキングメモリの改善とともに、知能など他の認知機能の改善、

不注意や多動など行動・症状面の改善効果があることが証明

されており、こちらを活用するのも有効かもしれません。

しかしながら、これらは決して1回だけでは効果は表れるとは言えません。

改善への道には、継続的な取り組みが不可欠です。

効果が出るまで、その子に合った方法で、長い目で支援する必要があります。

また、LDによる困難があるからといって、

なんでもかんでもやってあげることが

必ずしも子どもにとって良いとは限りません。

場合によっては、社会自立への道から遠ざかってしまう…そんな懸念もあるからです。

社会で生きていくために、本人に合った学び方を身につけ、

少しずつできることを増やしていけると良いですね。

 

以上、LDの子どもへの配慮や対応の仕方について解説しました。

 

 

イラスト:ニョラネコ

LD(学習障害)とは①

誰にでも、スポーツや勉強などに得手不得手や好き嫌いは多少あることかと思います。

また、それらが苦手でコンプレックスを抱えている方もいるかもしれません。

ひとえに「勉強が苦手」といっても、

「英語が苦手」「歴史が嫌い」とはまた別に、

「会話はできるのに、文字は読めない(書けない)」

「極端に物覚えが悪い」といったケースもあります。

そこで今回は。「LD(学習障害)」について解説したいと思います。

 

LD(学習障害、以下LD)とは、

「基本的には全般な知的の遅れはないが、聞く、話す、読む、書く、計算する、または推論する能力のうち特定の者の習得と使用に著しい困難を示す様々な状態を指すものである。学習障害は、その原因として、中枢神経系に何らかの機能障害があると推定されるが、視覚障害、聴覚障害、情緒障がいなどの障害や、環境的な要因が直接の原因となるものではない」

と定義されています。(文部科学省より)

知的な遅れはないものの、努力してもなかなか学習効果が上がらず

苦しい思いをしていることがあります。

また、特定の領域において苦手が顕著に表れることが原因で、

本人の努力不足だとあらぬ誤解を受けることもあります。

 

LDの特徴は、以下のようにまとめられます。

 

1.「読む・書く」の困難について

・文字がはっきり読めない(動いて見える、逆さに見えるなど)

・単語と単語の意味がつながっていない

・書くのが遅く、一生懸命ノートを取っている途中で黒板を消されてしまう

 

2.「聞く・話す」の困難について

・聞きたい音が聞き取れない

・自分の考えを整理できず話が続かない、言いたいことが言えない

・聞いた話を覚えておくことができない

 

3.「計算・推論」の困難について

・繰り上がりの計算ができない

・図形の辺の長さや面積の広さを推論したりすることができない

・表やグラフの意味を読み取ることができない

 

などなど。

文字を書く際に枠からはみ出してしまったり、

物の大きさや広さ、奥行きなどをイメージできない場合は、

空間認知の力が低いためと考えられます。

また、板書(黒板に書かれた内容)を書き写すことが苦手な場合は、

「見て→覚えて→書く」ための「覚える」力

短期記憶(ワーキングメモリー)の能力が低いためとも考えられます。

 

前述のとおり、全般に知的な遅れがなく、ある分野だけが極端に苦手なケースが多いため、

「なまけている」「やる気がない」などの誤解を受けやすい

ところも難点です。

また本人も、

「他のことはうまくいくのに何故これだけができないのか」

と、原因がわからずモヤモヤしていることも少なくありません。

特に子どもの場合、なかなか「LD」という言葉に直接触れる機会もないため、

大人になってから他の人との感覚の違いを初めて知る

ケースも多いと言われています。

ある調査では、

「9歳までに適切な教育が受けられなかった子どもの場合、そのうちの実に70%が読みのつまずきを生涯持ち続ける可能性がある」

ことが報告されています。※National Center for Learning Disabilities,2004

 

では、どのように対応するべきなのでしょうか。

次回、LDの子どもへの配慮や対応の仕方について解説していきます。

 

 

イラスト:ニョラネコ

ADHDとは②

前回のブログでは、ADHDの特徴について解説しました。

たとえばADHDの特性が表れた場合、ついつい声を荒げてしまったり

むりやり事態を収束させようとしたりしがちなケースをしばしば見かけます。

しかし、これでは本人のフラストレーションが溜まる一方で、

課題を解決することは難しいでしょう。

では、どのようにして対応すればよいのでしょうか。

回は、ADHD傾向にある子どもへの配慮や対応の仕方

について解説したいと思います。

 

・なくし物、忘れ物が多い

→チェックリストを作り、一緒に確認する習慣をつける

×「明日の準備は終わったの?」「なんでまた忘れてるの!」

〇「明日の持ち物チェックいくよー!上履き!」→「ある!」→「体育着」→「OK!」

…習慣づけられるまで、根気よく継続しましょう。楽しさを加えるとGood!

 

・とにかくじっとしていることが苦手

→体を動かせる場面を与える、時間を区切るなど

×「大人しくしていなさい!」「じっとできないなら〇〇へ連れていくのやめるよ!」

〇「これ運ぶの手伝ってくれると助かるなぁ」

「あと〇分間、座っていられるかな~、スタート!」

…「手伝いなどで体を動かす→役に立てる→褒められる」

 「小さな課題→できる→褒められる」など、

 これらを繰り返すことで自信がつき、良い行動が増えていきます。

 

・考える前に体が動いてしまう

→事前に意識づけを行なう

×「いきなり道路に出たら危ないに決まっているでしょ!」

〇「道路に出る前には、一度止まって車が来ないか左右を確認すること!」

→テレビなどの映像で動機づけができると印象に残り、衝動的な行動を抑えやすくします。

 

などなど。

基本的にどんな子どもも一緒ですが、

褒める場面をたくさん作ることを心がけることが大切です。

叱られた記憶よりも、褒められた記憶の方が残りやすく

行動改善の近道になります。

危険行動など叱らなければいけない時には、

簡潔に、要点を絞って伝えましょう。

 

また、何かと悪い点ばかりに目を向けがちになってしまいますが、

ADHDの特性を持つ人は行動力が高く、

様々なことに興味を持って挑戦できる才能を持っています。

たくさんのことに挑戦するということは、

それだけチャンスをつかむきっかけが多いということです。

過去の偉人にも「ADHDだったのでは?」と言われている人も多く、

その行動力の高さが周囲に大きな影響を与えていったと考えられます。

 

こうした配慮や対応の仕方を知ることで、

子どもが持つ本来の可能性を見出しやすくなり、

のびのびと成長するきっかけになるのではと思います。

もちろん、これらの方法がすべての子どもに当てはまるとは限りません。

だからこそ、一人ひとりの子どもを理解することが大切なのですね。

 

以上、ADHDの傾向にある子どもへの配慮や対応の仕方について解説しました。

 

 

イラスト:ニョラネコ

 

ADHDとは①

これまでは、発達障害の種類として、自閉症スペクトラムに分類される

「自閉症」「アスペルガー症候群」について解説してきました。

今回は、ADHDについて解説したいと思います。

 

ADHD(注意欠陥多動性障害)は、

何らかの脳の機能障害によってドーパミンが不足していることが原因と考えられており、

じっとしていることが苦手、衝動的に行動してしまう

などの特性が見られます。

特徴としては、以下の3つが挙げられます。

 

「不注意」

…気が散りやすく、忘れっぽい。集中力を長時間継続することが困難

・なくし物や忘れ物が多い、整理整頓が苦手

・話しかけても聞いているのか聞いていないのかわからない(上の空)

・周囲を見ることなくそのまま道路に出てしまう

・簡単なミスが多い(計算ミス、誤字や脱字)

 

「多動性」

…とにかくじっとしていることが苦手

・授業中でも立ち歩いたり、じっと座っていられず周りに話しかけたりする

・話の内容がころころ変わる

・(相手の話を聞かずに)一方的に話してしまう

 

「衝動性」

…気持ちや欲求をコントロールしにくく、考える前に体が動いてしまう

・順番を守らずに横入りしてしまう

・気になる物を見つけて道路に飛び出してしまう

・授業中、質問が終わらないうちに挙手をせず答えてしまう

・邪魔をされると泣いたり怒ったりするなど癇癪をおこすことがある

 

これら3つの特徴のうち、全部を有している、またはどれか一つが特に強いなど、

人によって症状は様々です。

店内を走り回る子どもや、忘れ物が多かったり、机の中がぐちゃぐちゃだったりするなど、

一見本人のなまけに思われやすい特性が多くあります。

前述したとおり、ADHDは脳機能の何らかの障害によるものと言われており、

親のしつけのせいでも、子どものなまけでもないのです。

忘れものをしないようにしても、じっとしていようとしても、

それを実行できない本人が一番困っているのでは

ということを忘れてはなりません。

「なぜ自分はいつもうまくできないんだろう」という悩みがきっかけで、

不登校傾向になっていくケースもあります。

ちなみに、アメリカの精神学会の診断基準では

ADHDの割合は5%とされていますが、アメリカ政府の統計では

ADHDと診断されている子どもの割合は11%と発表されています(2012年)。

かといって、

「あの人(子)はADHDなんだろう」「私はADHDなのかも」

決めつけるのは適切ではないでしょう。

ただ忘れっぽいだけ、集中力がないだけの場合との線引きは、

自分一人の主観になってしまうとなかなか判断できないものです。

気になったり、日常や学校生活に支障があったりするようであれば、

専門医への相談をしてみるのも一つの手段です

早期の相談が日常生活を過ごしやすくするきっかけが得られるかもしれません。

 

次回は、ADHDの特性を持つ子どもへの配慮や対応の仕方について解説します。

 

イラスト:ニョラネコ

神童・モーツァルトが持って生まれたもの

クラシック音楽の代表的な音楽家として世界中に知られているモーツァルト

彼が生まれ持った類まれな才能は、世界に激震を与えました。

モーツァルトの名を知らない人はいないといっても過言ではないでしょう。

また、私たちもあらゆる場面で彼の書いた曲を耳にしていることと思います。

今回は少し趣向を変えて、そんな偉大な音楽家の一面に触れながら、

子どもたちのことを考えてみたいと思います。

彼の正式な名前は、「ウォルフガング・アマデウス・モーツァルト」。

1756年にザルツブルグ(現在のオーストリアの都市)で生まれ、幼いころより

父親から英才教育を受けてきました。3歳のころにはチェンバロを弾き始め、

5歳の時には最初の曲を作曲します。

父親と共に音楽旅行を重ね、宮廷などで演奏を披露し大絶賛されました。

トルコ行進曲」や「フィガロの結婚」などの代表曲を作曲した後、

626曲目の「レクイエム」の作曲に取り組んでいる途中、35歳という若さで短い生涯を終えます。

 

一度聞いた曲をすぐにピアノで弾いたりアレンジしたり、

目隠ししながらピアノを奏でたりと

彼の音楽の才能は誰もが認めていました。また、600曲を超える曲の数もそうですが、

彼の楽譜にはほとんど書き直した跡がありません

試行錯誤しながらの作曲ではなく、

頭の中に思い描き完成した楽譜をそのまま譜面に起こすという、

常人離れした才能によるものだと言われています。

このような音楽の才能に恵まれたモーツァルトには、

独奏のトランペットに異常な恐怖心を抱いていたり、

幼稚な言葉や下品な言葉(いわゆる下ネタ)を好んでいたりする

などの一面もあったと言います。

(今流行りのウ〇コ漢字ドリルなんかは、特に大好きだったと思います.笑)

音に関しては特に敏感で、

ヴァイオリンの音色を「バターみたい(柔らかい音色なので)」と表現したり

演奏の中でのわずかな不協和音にも反応し、

どの楽器がどのようなミスをしたかが把握できたりと、

いわゆる「ギフテッド」のような特性ともとれる才能を発揮したのです。※今後解説予定

 

彼の能力のアンバランスさや言動を考えると、

脳の発達段階において何らかの特性を抱えていた

と考えても良いと思われます

音に対する感覚が人と違うことによって、

様々な生きづらさを感じていたと同時に、

幼いころから音楽に触れられるという環境があったことにより、

彼の個性と才能を最大限に発揮することができたことは、

彼にとって何よりの救いであり、世界に多大な財産を残すことになりました。

現代の不登校や発達特性を抱えた子どもも含め、

すべての子どもたちに輝ける可能性があるということを、

私たちは知っておく必要があります。

そうした才能や可能性を見出すためにも、

子ども達と親身に関わり、理解することが大切です。

 

未来のモーツァルトは、もしかしたら身近な誰かかもしれませんね。

 

イラスト:ニョラネコ

アスペルガー症候群とは②

前回のブログでは、「アスペルガー症候群」について解説しました。

知的な遅れを伴わない傾向のため気づかれにくいとされる症状に、

コミュニケーション面で困難を抱えているケースが少なくありません。

では、どのような配慮や対応が必要なのでしょうか。

今回は、「アスペルガー症候群」の傾向にある、特にお子さんへの

配慮や対応の仕方について、いくつか例を挙げて解説したいと思います。

 

 

 

 

 

 

・比喩が伝わらない
→具体的な内容で伝える
×「まっすぐ家に帰りましょう」
〇「寄り道をせずに帰りましょう」「通学路を通って帰りましょう」
…比喩が伝わらない場合は、「こういうことを表現しているんだよ」

と説明を加えて覚えてもらうなど、少しずつ表現の幅を広げると良いでしょう

 

 

・相手の感情を理解できない、直接的に表現してしまう

→「こう言ったら相手はこう感じる(みたいだよ)」ということを教える
×「なんでそんなことを言うの!傷つくに決まってるでしょ!」
〇「□□と言われて、△△ちゃんは嫌だと感じたんだよ。」
…何が原因で相手はどう感じ、結果どうなったのかを理解させることで、

今後失敗を減らすことができます。また、注意をするときは感情に任せるのではなく、

静かに諭すように伝えることを心がけてください。

 

 

・話すのは好きだが聞くのは苦手
→会話の際のルールを決める、話の内容を可視化する
×「人の話ちゃんと聞いてる?」「ちょっとは俺の話も聞けよ」
〇「次は私が話す番ね」「(話が終わったら)じゃあ次はあなたの番ね」など
“質問があるときは手を挙げる”“指名されてから答える”などのルールを貼り出す
…明確なルールがあれば、本人の行動をサポートでき、規範意識も高まりますね。

 

以上のような配慮が考えられます。
一見、課題としてしかとらえられていないことも、
「融通か利かない」→「ルールを順守する意識、正義感が強い」
「物事をはっきりと言ってしまう」→「自分の意見をはっきり言える」
と考えると、これは一つの素晴らしい個性、長所ととらえることができるはずです。
正義感、責任感を生かして何かの役割を任せてあげると、一生懸命取り組んでくれます。

本人の能力を超えるような難しいことをお願いすると、

失敗した際自信を失ってしまうので

まずはちょっと頑張れば簡単にできることを繰り返し、

自信を高めていきましょう。

素直で正義感が強い故にトラブルを引き起こしてしまうのは、

本人としてもいまいち納得のできることではなく、

失敗経験が重なるとどんどん自信を失ってしまう恐れもあります。

子どもならなおのこと、段階を経て、具体的に、少しずつの積み重ねをすることで、

だんだんと社会性が構築されていけば良いのではないかと思います。

以上、「アスペルガー症候群」の傾向にある子どもへの配慮と対応の仕方についての解説でした。

 

 

イラスト:ニョラネコ

アスペルガー症候群とは①

前回のブログでは、「自閉症」について解説しました。自閉症とは、「自閉症スペクトラム」という考え方の中に含まれており、「アスペルガー症候群」「広汎性発達障害もここに分類されています。

そこで今回は、「アスペルガー症候群」について解説したいと思います。

 

アスペルガー症候群は自閉症とよく似ており、共通した特性が多くあります。

自閉症との違いは、「著しい言葉の遅れ、知的な遅れがない」ということです。

特徴としては、

1.抽象的な表現の理解や、空気を読むことが苦手

 ・比喩が伝わらない

 ・相手の感情を察することができない

 ・暗黙の了解が理解できない、など

2.直接的に表現してしまう、言葉の意味をそのまま飲み込んでしまう 

 ・「その服、似合ってないね」と悪気もなく言ってしまう

 ・「まっすぐ家に帰りましょう」→「曲がり角があるので無理です」などと考えてしまう、など

3.想像力が弱く、予定の変更が苦手

 ・急な予定変更が起こるとパニックになる

 ・高い所に上る→落ちるかもしれない→危険という想像が苦手

 ・二つのことを同時に行なうことが苦手(効率的な動きの想像が困難)

4.コミュニケーションでトラブルを起こしやすい

 ・話すのは好きだが聞くのは苦手

 ・直接的な表現でよくケンカになるが、怒らせた原因を理解するのが困難

 ・会話がうまくかみあわない、など

これらの症状が表れやすい傾向にあります。

言葉の遅れや知的な遅れがあまりないため、比較的普通に接することができるため、

特性を抱えているという風にはあまり思われることがありません。

先の例で、「その服、似合ってないね」と言っても、本人としては事実を言ったまでで、

相手が傷つく、怒るということが想像できず、

トラブルになっても自分が悪いという自覚がないのです。

この他にも、相手の気持ちを理解することが困難なため、

自己主張が強く他者の意見を聞き入れなかったり、

聞くことが苦手で相手の話を聞き洩らしてしまったり、

聞いたことだけがすべてであり事実となってしまったりすることもあります。

そのため、コミュニケーション面でのトラブルが多く起こってしまいがちです。

トラブルが続くことで自己肯定感がどんどん低くなり、

「どうせ自分は…」とふさぎこみ、学校に行かなくなるというケースも少なくありません。

うまくいかない本人はさらに辛い思いをしていることもあるのです。

ここでもやはり、トラブルばかりに目を向けず、良い面もしっかりと認めていくことが大切です。

自閉症と同様、こだわりが強い傾向があるため、

一つの役割を与えることで責任感を持って一生懸命取り組んでくれます。

興味関心のあることの知識や記憶力がずば抜けており、非常に博識だったりもします。

 

では、こうした輝きを伸ばしつつ、どう課題を克服していけば良いのでしょうか。

次回、アスペルガー症候群の子どもへの配慮や対応の仕方について解説します。

 

 

イラスト:ニョラネコ

自閉症とは②

さて、前回は「自閉症」の特徴などについて解説しました。

過敏な感覚ゆえに日常生活に支障をきたしてしまうことも多くある自閉症の特性ですが、
症状がわかるからこそ対策が打てる、というものです。
今回は、家庭や学校などでできる自閉症の特性への配慮と対応方法について解説します。

・言葉の意味を理解していない場合
→遠回しの表現や比喩、または長い文章などで説明するよりも、短い言葉で端的に伝える
×「外から帰ったら手を洗ってうがいしてすぐに宿題しなさい」
〇 ①「帰ったらまずは手を洗おう」 ②「次にうがいをしよう」 ③「終わったら宿題をしよう」
…いっぺんに話さず、短い文章で一つずつ順番に伝えましょう。イラストや写真などで伝えると、よりGoodです。

・予定がわからないと不安になる場合
→予定表を作成するなど。予定が変更になる場合は、なるべく早く知らせる
×「明日は朝からどこかでかけようか」
〇「明日は10時には家を出て、映画を観に行こう」
…次に何をするのかがわかることで安心できます。

・一つのことにこだわり、次の工程に進めない場合
→全体で行動する必要があるときなどは、回数や時間などで行動の区切りを設定する
×「もう終わりにして、早く行くよ」
〇「(事前に)〇時になったら(時計の長い針が〇に来たら)終わりです」
…丁寧な仕事が要求される掃除や反復作業は、一生懸命取り組んでくれます。

・パニックを起こしてしまった場合
→まずは落ち着ける環境へ移動。落ち着くまで待ってから事情を聞く
×「静かにしなさい!」「いいから座りなさい!」
〇静かな(周囲から影響のない)場所へ移動→落ち着いたら褒める→事情を聞く→振り返り
…大きな声や抽象的な支持を出しても耳に入りません。まずは落ち着かせることを第一に。

例えばこのような対応が挙げられると思います。
危険行為や他の人の迷惑にならない場合、ある程度は大目に見てあげましょう。
注意をするときは「端的に、具体的に」を心がけます。
もちろん、人によって個性や特性に違いは出てくるものです。
個に合った支援の方法を探していくことが大切です。
また、前回の記事でも触れた通り、
個性や輝きを発見していくことも忘れずに。

以上、自閉症の子どもへの配慮と対応の仕方について解説しました。

 

イラスト:ニョラネコ

自閉症とは①

前回のブログでは「発達障害」について解説しました。発達障害の種類は複数存在し、

その種類によって対応の仕方、支援の仕方も変化してきます。

今回は、その種類の中から「自閉症」について取り上げたいと思います。

 

自閉症の特徴としては、

1. コミュニケーションをとることがうまくできない

 ・目を見て話すことをしない、できない

 ・親になつかない、感情を表さない

 ・相手に合わせて行動したり、場の空気を読むことが苦手、など

2. 言葉をうまく使うことが苦手

 ・言葉をオウム返しする

 ・言葉の意味を理解していない

 ・ブツブツと独り言を言うことが多い、など

3. こだわり行動が多い・常に体(の一部)を動かしている

 ・意味もなく手をひらひらさせたり、叩いたりする

 ・ぴょんぴょんと飛び跳ね続けている

 ・一つのことを飽きずにずっと続けている、など

4.急な変更が苦手、一部の感覚が過敏

 ・急に予定が変わるとパニックを起こす、予定がわからないと不安になる

 ・触られることを嫌う

 ・好き嫌いが激しい、偏りがある、など

などの症状が現れやすいとされています。また、自閉症の子供の多くには、

知能指数IQが70以下となる知的障害が伴うこともある

と指摘されています。

しかしこれも一概には言えず、近年では「高機能自閉症」という

知能が比較的高く、物事の理解ができる軽度の自閉症も確認されています。

自閉症という言葉には「閉じる」という文字が入っていることから、

心を閉ざしている病気と誤解をされがちですが、そうではありません。

「自閉」という言葉は、スイスの精神科医ブロイラーが、統合失調症の病態理解の中心にある

「痴呆(外部との隔絶、あるいは外界からの撤退)」の概念を説明する際に使用したことが始まりです。

以前は親のしつけに問題があると誤った認識がされてきましたが、

現在では「何らかの脳機能障害が原因である」と考えられています。

 

自閉症の特性を持っている場合、言葉の意味を理解していなかったり、

急な変更に弱かったりすることで、

社会生活に大きな支障をきたしてしまうことが多いとされています。

反面、他の人とは違う感覚を持っているからこそ、

音楽や絵画などの芸術的な才能に突出している(一度聞いた音楽をすぐ演奏できる、色使いが独特など)

計算能力や記憶力がずば抜けている(暗算が一瞬でできる、同級生の誕生日を全部覚えているなど)

など、素晴らしい才能を持ち合わせていることも多くあります。

つらい部分にだけスポットを当てるのではなく、

それぞれの持つ個性や輝きにもしっかりと目を向けたいですね。

ちなみに、筆者には自閉症の親戚がいるのですが、

皿洗いに夢中になるという、とても嬉しい(?)こだわりを見せてくれたのですが、

あまりにも毎日熱心に洗い物をするせいで手がボロボロになったため、

一時的に皿洗いをストップさせたところ、ストレスで円形脱毛症になる、といった

ハプニングが起きたことがあります。

 

次回は、自閉症の子どもへの配慮や対応の仕方について解説します。

 

 

イラスト:ニョラネコ