LDとは②

前回は、LD(学習障害、以下LD)の特徴について説明しました。

こうした特性を抱えていても、対応や学び方を工夫することで、

症状を少しずつ改善したり、学びやすくしたりすることは可能です。

今回は、LDの子どもへの配慮や対応の仕方について解説していきます。

 

・「読む・書く」の困難について

→文字の拡大やマス目のノートの使用など、

読み(書き)やすくする工夫をする

×「とにかく書いて(読んで)覚えましょう」

〇読み・・・単語と単語の間を空ける、行間を広くする、など

 書き・・・大きいマス目のあるノートを使う、ノートの代わりにタブレットを使う、など

…小さい文字や潰れた文字は大きく拡大することで、読みやすさが飛躍的にアップします。

 読む・書くこと自体も大切ですが、「知識を活用できるようになること」が一番大切です。

 

・「聞く・話す」の困難について

→会話は短く端的に。メモや機器を使って

聞き(話し)やすくする工夫をする

×ざわざわした環境での会話、長い説明など

〇静かな環境で話をする、メモやボイスレコーダーなど聞き(見)返せるようにする

…メモを取る習慣は、大人になっても有効ですね。話がまとまらないときは、聞き手側がある程度リードしつつ、話の順序立てをスモールステップで教えてあげると良いでしょう。

 

・「計算・推論」の困難について

→目で見て、イメージしやすくする

×「この問題はここがこうなるよね、じゃあ次は…」

〇問題にイラストなどを添える、解説動画を見せる、など

…図のように、ひっ算の補助線を引くことで、どの数字がどこに来るかが整理しやすくなります。

 

などなど。

現代では、スマートフォンやタブレットなどのICT機器の普及が進み、さまざまな場面で

学習の補助ツールとしてICT機器は活用されています。(後日解説)

カメラやタイピングなど、ICT機器は生活の場面だけでなく

LDの子どもたちにとっても非常に有効に

活用できる機能は数多く搭載されていますので、

必要に応じて学習活動に取り入れてみると良いでしょう。

その他、スウェーデンで開発された

ワーキングメモリ(短期記憶)トレーニングの研究では、

ワーキングメモリの改善とともに、知能など他の認知機能の改善、

不注意や多動など行動・症状面の改善効果があることが証明

されており、こちらを活用するのも有効かもしれません。

しかしながら、これらは決して1回だけでは効果は表れるとは言えません。

改善への道には、継続的な取り組みが不可欠です。

効果が出るまで、その子に合った方法で、長い目で支援する必要があります。

また、LDによる困難があるからといって、

なんでもかんでもやってあげることが

必ずしも子どもにとって良いとは限りません。

場合によっては、社会自立への道から遠ざかってしまう…そんな懸念もあるからです。

社会で生きていくために、本人に合った学び方を身につけ、

少しずつできることを増やしていけると良いですね。

 

以上、LDの子どもへの配慮や対応の仕方について解説しました。

 

 

イラスト:ニョラネコ

【実施報告】7月29日(土)「第2回 不登校・発達障がいに関する研修会」

7月29日(土)、不登校・発達障がいに関する研修会を開催しました。

大学院生、保護者、教員経験者など、子どもたちと関わる多くの方々にご参加いただきました。

午前の部の講義形式に午後の部のグループディスカッションと、

ボリューム満点の研修に、参加者の皆さんは積極的に意見交換をしながら参加していました。

 

「色々な立場の人と意見を交わすことができ、今までにない視点に気付けた」

「今回学んだことを、家庭での子どもとの関わりに生かしたい」

などの意見を多くいただき、大変うれしく思います。

皆様にとって、充実した研修となったなら幸いです。

また、我々にとっても多くの気づきが生まれた研修となりました。

本研修へのご参加、ありがとうございました。

LD(学習障害)とは①

誰にでも、スポーツや勉強などに得手不得手や好き嫌いは多少あることかと思います。

また、それらが苦手でコンプレックスを抱えている方もいるかもしれません。

ひとえに「勉強が苦手」といっても、

「英語が苦手」「歴史が嫌い」とはまた別に、

「会話はできるのに、文字は読めない(書けない)」

「極端に物覚えが悪い」といったケースもあります。

そこで今回は。「LD(学習障害)」について解説したいと思います。

 

LD(学習障害、以下LD)とは、

「基本的には全般な知的の遅れはないが、聞く、話す、読む、書く、計算する、または推論する能力のうち特定の者の習得と使用に著しい困難を示す様々な状態を指すものである。学習障害は、その原因として、中枢神経系に何らかの機能障害があると推定されるが、視覚障害、聴覚障害、情緒障がいなどの障害や、環境的な要因が直接の原因となるものではない」

と定義されています。(文部科学省より)

知的な遅れはないものの、努力してもなかなか学習効果が上がらず

苦しい思いをしていることがあります。

また、特定の領域において苦手が顕著に表れることが原因で、

本人の努力不足だとあらぬ誤解を受けることもあります。

 

LDの特徴は、以下のようにまとめられます。

 

1.「読む・書く」の困難について

・文字がはっきり読めない(動いて見える、逆さに見えるなど)

・単語と単語の意味がつながっていない

・書くのが遅く、一生懸命ノートを取っている途中で黒板を消されてしまう

 

2.「聞く・話す」の困難について

・聞きたい音が聞き取れない

・自分の考えを整理できず話が続かない、言いたいことが言えない

・聞いた話を覚えておくことができない

 

3.「計算・推論」の困難について

・繰り上がりの計算ができない

・図形の辺の長さや面積の広さを推論したりすることができない

・表やグラフの意味を読み取ることができない

 

などなど。

文字を書く際に枠からはみ出してしまったり、

物の大きさや広さ、奥行きなどをイメージできない場合は、

空間認知の力が低いためと考えられます。

また、板書(黒板に書かれた内容)を書き写すことが苦手な場合は、

「見て→覚えて→書く」ための「覚える」力

短期記憶(ワーキングメモリー)の能力が低いためとも考えられます。

 

前述のとおり、全般に知的な遅れがなく、ある分野だけが極端に苦手なケースが多いため、

「なまけている」「やる気がない」などの誤解を受けやすい

ところも難点です。

また本人も、

「他のことはうまくいくのに何故これだけができないのか」

と、原因がわからずモヤモヤしていることも少なくありません。

特に子どもの場合、なかなか「LD」という言葉に直接触れる機会もないため、

大人になってから他の人との感覚の違いを初めて知る

ケースも多いと言われています。

ある調査では、

「9歳までに適切な教育が受けられなかった子どもの場合、そのうちの実に70%が読みのつまずきを生涯持ち続ける可能性がある」

ことが報告されています。※National Center for Learning Disabilities,2004

 

では、どのように対応するべきなのでしょうか。

次回、LDの子どもへの配慮や対応の仕方について解説していきます。

 

 

イラスト:ニョラネコ

ADHDとは②

前回のブログでは、ADHDの特徴について解説しました。

たとえばADHDの特性が表れた場合、ついつい声を荒げてしまったり

むりやり事態を収束させようとしたりしがちなケースをしばしば見かけます。

しかし、これでは本人のフラストレーションが溜まる一方で、

課題を解決することは難しいでしょう。

では、どのようにして対応すればよいのでしょうか。

回は、ADHD傾向にある子どもへの配慮や対応の仕方

について解説したいと思います。

 

・なくし物、忘れ物が多い

→チェックリストを作り、一緒に確認する習慣をつける

×「明日の準備は終わったの?」「なんでまた忘れてるの!」

〇「明日の持ち物チェックいくよー!上履き!」→「ある!」→「体育着」→「OK!」

…習慣づけられるまで、根気よく継続しましょう。楽しさを加えるとGood!

 

・とにかくじっとしていることが苦手

→体を動かせる場面を与える、時間を区切るなど

×「大人しくしていなさい!」「じっとできないなら〇〇へ連れていくのやめるよ!」

〇「これ運ぶの手伝ってくれると助かるなぁ」

「あと〇分間、座っていられるかな~、スタート!」

…「手伝いなどで体を動かす→役に立てる→褒められる」

 「小さな課題→できる→褒められる」など、

 これらを繰り返すことで自信がつき、良い行動が増えていきます。

 

・考える前に体が動いてしまう

→事前に意識づけを行なう

×「いきなり道路に出たら危ないに決まっているでしょ!」

〇「道路に出る前には、一度止まって車が来ないか左右を確認すること!」

→テレビなどの映像で動機づけができると印象に残り、衝動的な行動を抑えやすくします。

 

などなど。

基本的にどんな子どもも一緒ですが、

褒める場面をたくさん作ることを心がけることが大切です。

叱られた記憶よりも、褒められた記憶の方が残りやすく

行動改善の近道になります。

危険行動など叱らなければいけない時には、

簡潔に、要点を絞って伝えましょう。

 

また、何かと悪い点ばかりに目を向けがちになってしまいますが、

ADHDの特性を持つ人は行動力が高く、

様々なことに興味を持って挑戦できる才能を持っています。

たくさんのことに挑戦するということは、

それだけチャンスをつかむきっかけが多いということです。

過去の偉人にも「ADHDだったのでは?」と言われている人も多く、

その行動力の高さが周囲に大きな影響を与えていったと考えられます。

 

こうした配慮や対応の仕方を知ることで、

子どもが持つ本来の可能性を見出しやすくなり、

のびのびと成長するきっかけになるのではと思います。

もちろん、これらの方法がすべての子どもに当てはまるとは限りません。

だからこそ、一人ひとりの子どもを理解することが大切なのですね。

 

以上、ADHDの傾向にある子どもへの配慮や対応の仕方について解説しました。

 

 

イラスト:ニョラネコ

 

ADHDとは①

これまでは、発達障害の種類として、自閉症スペクトラムに分類される

「自閉症」「アスペルガー症候群」について解説してきました。

今回は、ADHDについて解説したいと思います。

 

ADHD(注意欠陥多動性障害)は、

何らかの脳の機能障害によってドーパミンが不足していることが原因と考えられており、

じっとしていることが苦手、衝動的に行動してしまう

などの特性が見られます。

特徴としては、以下の3つが挙げられます。

 

「不注意」

…気が散りやすく、忘れっぽい。集中力を長時間継続することが困難

・なくし物や忘れ物が多い、整理整頓が苦手

・話しかけても聞いているのか聞いていないのかわからない(上の空)

・周囲を見ることなくそのまま道路に出てしまう

・簡単なミスが多い(計算ミス、誤字や脱字)

 

「多動性」

…とにかくじっとしていることが苦手

・授業中でも立ち歩いたり、じっと座っていられず周りに話しかけたりする

・話の内容がころころ変わる

・(相手の話を聞かずに)一方的に話してしまう

 

「衝動性」

…気持ちや欲求をコントロールしにくく、考える前に体が動いてしまう

・順番を守らずに横入りしてしまう

・気になる物を見つけて道路に飛び出してしまう

・授業中、質問が終わらないうちに挙手をせず答えてしまう

・邪魔をされると泣いたり怒ったりするなど癇癪をおこすことがある

 

これら3つの特徴のうち、全部を有している、またはどれか一つが特に強いなど、

人によって症状は様々です。

店内を走り回る子どもや、忘れ物が多かったり、机の中がぐちゃぐちゃだったりするなど、

一見本人のなまけに思われやすい特性が多くあります。

前述したとおり、ADHDは脳機能の何らかの障害によるものと言われており、

親のしつけのせいでも、子どものなまけでもないのです。

忘れものをしないようにしても、じっとしていようとしても、

それを実行できない本人が一番困っているのでは

ということを忘れてはなりません。

「なぜ自分はいつもうまくできないんだろう」という悩みがきっかけで、

不登校傾向になっていくケースもあります。

ちなみに、アメリカの精神学会の診断基準では

ADHDの割合は5%とされていますが、アメリカ政府の統計では

ADHDと診断されている子どもの割合は11%と発表されています(2012年)。

かといって、

「あの人(子)はADHDなんだろう」「私はADHDなのかも」

決めつけるのは適切ではないでしょう。

ただ忘れっぽいだけ、集中力がないだけの場合との線引きは、

自分一人の主観になってしまうとなかなか判断できないものです。

気になったり、日常や学校生活に支障があったりするようであれば、

専門医への相談をしてみるのも一つの手段です

早期の相談が日常生活を過ごしやすくするきっかけが得られるかもしれません。

 

次回は、ADHDの特性を持つ子どもへの配慮や対応の仕方について解説します。

 

イラスト:ニョラネコ

7月16日(日)神奈川県サッカー協会講演

7月16日(日)、神奈川県サッカー協会で行われた、サッカー指導者を指導するリーダーの皆さんの講習会の中で、「発達支援に関する講習」を40分ほどお時間をいただきお話しさせていただきました。

日頃のサッカーの活動の中でも、「発達特性」といった特別なニーズがある、

という視点をもって子供たちに接してほしいという講演の内容でしたが、

受講していただいた皆さんに真剣に耳を傾けていただき、後半には多くの質問をしていただきました。

此度の講演が、少しでも皆様の指導のお役に立てればと思います。

貴重なお時間をいただき、ありがとうございます。

神童・モーツァルトが持って生まれたもの

クラシック音楽の代表的な音楽家として世界中に知られているモーツァルト

彼が生まれ持った類まれな才能は、世界に激震を与えました。

モーツァルトの名を知らない人はいないといっても過言ではないでしょう。

また、私たちもあらゆる場面で彼の書いた曲を耳にしていることと思います。

今回は少し趣向を変えて、そんな偉大な音楽家の一面に触れながら、

子どもたちのことを考えてみたいと思います。

彼の正式な名前は、「ウォルフガング・アマデウス・モーツァルト」。

1756年にザルツブルグ(現在のオーストリアの都市)で生まれ、幼いころより

父親から英才教育を受けてきました。3歳のころにはチェンバロを弾き始め、

5歳の時には最初の曲を作曲します。

父親と共に音楽旅行を重ね、宮廷などで演奏を披露し大絶賛されました。

トルコ行進曲」や「フィガロの結婚」などの代表曲を作曲した後、

626曲目の「レクイエム」の作曲に取り組んでいる途中、35歳という若さで短い生涯を終えます。

 

一度聞いた曲をすぐにピアノで弾いたりアレンジしたり、

目隠ししながらピアノを奏でたりと

彼の音楽の才能は誰もが認めていました。また、600曲を超える曲の数もそうですが、

彼の楽譜にはほとんど書き直した跡がありません

試行錯誤しながらの作曲ではなく、

頭の中に思い描き完成した楽譜をそのまま譜面に起こすという、

常人離れした才能によるものだと言われています。

このような音楽の才能に恵まれたモーツァルトには、

独奏のトランペットに異常な恐怖心を抱いていたり、

幼稚な言葉や下品な言葉(いわゆる下ネタ)を好んでいたりする

などの一面もあったと言います。

(今流行りのウ〇コ漢字ドリルなんかは、特に大好きだったと思います.笑)

音に関しては特に敏感で、

ヴァイオリンの音色を「バターみたい(柔らかい音色なので)」と表現したり

演奏の中でのわずかな不協和音にも反応し、

どの楽器がどのようなミスをしたかが把握できたりと、

いわゆる「ギフテッド」のような特性ともとれる才能を発揮したのです。※今後解説予定

 

彼の能力のアンバランスさや言動を考えると、

脳の発達段階において何らかの特性を抱えていた

と考えても良いと思われます

音に対する感覚が人と違うことによって、

様々な生きづらさを感じていたと同時に、

幼いころから音楽に触れられるという環境があったことにより、

彼の個性と才能を最大限に発揮することができたことは、

彼にとって何よりの救いであり、世界に多大な財産を残すことになりました。

現代の不登校や発達特性を抱えた子どもも含め、

すべての子どもたちに輝ける可能性があるということを、

私たちは知っておく必要があります。

そうした才能や可能性を見出すためにも、

子ども達と親身に関わり、理解することが大切です。

 

未来のモーツァルトは、もしかしたら身近な誰かかもしれませんね。

 

イラスト:ニョラネコ

アスペルガー症候群とは②

前回のブログでは、「アスペルガー症候群」について解説しました。

知的な遅れを伴わない傾向のため気づかれにくいとされる症状に、

コミュニケーション面で困難を抱えているケースが少なくありません。

では、どのような配慮や対応が必要なのでしょうか。

今回は、「アスペルガー症候群」の傾向にある、特にお子さんへの

配慮や対応の仕方について、いくつか例を挙げて解説したいと思います。

 

 

 

 

 

 

・比喩が伝わらない
→具体的な内容で伝える
×「まっすぐ家に帰りましょう」
〇「寄り道をせずに帰りましょう」「通学路を通って帰りましょう」
…比喩が伝わらない場合は、「こういうことを表現しているんだよ」

と説明を加えて覚えてもらうなど、少しずつ表現の幅を広げると良いでしょう

 

 

・相手の感情を理解できない、直接的に表現してしまう

→「こう言ったら相手はこう感じる(みたいだよ)」ということを教える
×「なんでそんなことを言うの!傷つくに決まってるでしょ!」
〇「□□と言われて、△△ちゃんは嫌だと感じたんだよ。」
…何が原因で相手はどう感じ、結果どうなったのかを理解させることで、

今後失敗を減らすことができます。また、注意をするときは感情に任せるのではなく、

静かに諭すように伝えることを心がけてください。

 

 

・話すのは好きだが聞くのは苦手
→会話の際のルールを決める、話の内容を可視化する
×「人の話ちゃんと聞いてる?」「ちょっとは俺の話も聞けよ」
〇「次は私が話す番ね」「(話が終わったら)じゃあ次はあなたの番ね」など
“質問があるときは手を挙げる”“指名されてから答える”などのルールを貼り出す
…明確なルールがあれば、本人の行動をサポートでき、規範意識も高まりますね。

 

以上のような配慮が考えられます。
一見、課題としてしかとらえられていないことも、
「融通か利かない」→「ルールを順守する意識、正義感が強い」
「物事をはっきりと言ってしまう」→「自分の意見をはっきり言える」
と考えると、これは一つの素晴らしい個性、長所ととらえることができるはずです。
正義感、責任感を生かして何かの役割を任せてあげると、一生懸命取り組んでくれます。

本人の能力を超えるような難しいことをお願いすると、

失敗した際自信を失ってしまうので

まずはちょっと頑張れば簡単にできることを繰り返し、

自信を高めていきましょう。

素直で正義感が強い故にトラブルを引き起こしてしまうのは、

本人としてもいまいち納得のできることではなく、

失敗経験が重なるとどんどん自信を失ってしまう恐れもあります。

子どもならなおのこと、段階を経て、具体的に、少しずつの積み重ねをすることで、

だんだんと社会性が構築されていけば良いのではないかと思います。

以上、「アスペルガー症候群」の傾向にある子どもへの配慮と対応の仕方についての解説でした。

 

 

イラスト:ニョラネコ

アスペルガー症候群とは①

前回のブログでは、「自閉症」について解説しました。自閉症とは、「自閉症スペクトラム」という考え方の中に含まれており、「アスペルガー症候群」「広汎性発達障害もここに分類されています。

そこで今回は、「アスペルガー症候群」について解説したいと思います。

 

アスペルガー症候群は自閉症とよく似ており、共通した特性が多くあります。

自閉症との違いは、「著しい言葉の遅れ、知的な遅れがない」ということです。

特徴としては、

1.抽象的な表現の理解や、空気を読むことが苦手

 ・比喩が伝わらない

 ・相手の感情を察することができない

 ・暗黙の了解が理解できない、など

2.直接的に表現してしまう、言葉の意味をそのまま飲み込んでしまう 

 ・「その服、似合ってないね」と悪気もなく言ってしまう

 ・「まっすぐ家に帰りましょう」→「曲がり角があるので無理です」などと考えてしまう、など

3.想像力が弱く、予定の変更が苦手

 ・急な予定変更が起こるとパニックになる

 ・高い所に上る→落ちるかもしれない→危険という想像が苦手

 ・二つのことを同時に行なうことが苦手(効率的な動きの想像が困難)

4.コミュニケーションでトラブルを起こしやすい

 ・話すのは好きだが聞くのは苦手

 ・直接的な表現でよくケンカになるが、怒らせた原因を理解するのが困難

 ・会話がうまくかみあわない、など

これらの症状が表れやすい傾向にあります。

言葉の遅れや知的な遅れがあまりないため、比較的普通に接することができるため、

特性を抱えているという風にはあまり思われることがありません。

先の例で、「その服、似合ってないね」と言っても、本人としては事実を言ったまでで、

相手が傷つく、怒るということが想像できず、

トラブルになっても自分が悪いという自覚がないのです。

この他にも、相手の気持ちを理解することが困難なため、

自己主張が強く他者の意見を聞き入れなかったり、

聞くことが苦手で相手の話を聞き洩らしてしまったり、

聞いたことだけがすべてであり事実となってしまったりすることもあります。

そのため、コミュニケーション面でのトラブルが多く起こってしまいがちです。

トラブルが続くことで自己肯定感がどんどん低くなり、

「どうせ自分は…」とふさぎこみ、学校に行かなくなるというケースも少なくありません。

うまくいかない本人はさらに辛い思いをしていることもあるのです。

ここでもやはり、トラブルばかりに目を向けず、良い面もしっかりと認めていくことが大切です。

自閉症と同様、こだわりが強い傾向があるため、

一つの役割を与えることで責任感を持って一生懸命取り組んでくれます。

興味関心のあることの知識や記憶力がずば抜けており、非常に博識だったりもします。

 

では、こうした輝きを伸ばしつつ、どう課題を克服していけば良いのでしょうか。

次回、アスペルガー症候群の子どもへの配慮や対応の仕方について解説します。

 

 

イラスト:ニョラネコ